内臓脂肪と皮下脂肪のバランス「VSR(ブイ・エス・アール)」って何?

― 認知症予防にも関係する最新の指標 ―

ダイエットでは「体重」や「BMI」がよく注目されますよね。
でも近年の研究では、体に脂肪がどれくらいあるかよりも、どこについているのか がとても重要だと分かってきています。

その指標のひとつが VSR(Visceral-to-Subcutaneous Fat Ratio)=内臓脂肪/皮下脂肪比 です。


目次

VSRとは?

VSRとは、
内臓脂肪(おなかの奥の脂肪)
皮下脂肪(皮ふの下の脂肪) で割った値のこと。

  • VSR > 1.0 → 内臓脂肪が多いタイプ
  • VSR < 1.0 → 皮下脂肪が多いタイプ

CTで測定されることが多いですが、
「お腹が硬い・張っている・前に突き出ている」人は内臓脂肪が多い傾向があります。


内臓脂肪が多いと、なぜ“脳”に良くないの?

ここが今回の一番大事なポイントです。

① 内臓脂肪は“炎症物質”を出す

内臓脂肪は

  • IL-6
  • TNF-α

といった、慢性炎症を起こす物質を出しやすい脂肪です。

これらは血液を通じて脳にも届き、

  • 記憶をつかさどる「海馬」が弱る
  • 脳のインスリンの効きが悪くなる

といった現象を引き起こすことが分かっています。

② 皮下脂肪との意外な関係

皮下脂肪は、同じ脂肪でもわりと“おとなしい”脂肪で、
一定量ある方がホルモンバランスを保ったり、神経を守る働きがあるとも言われています。

つまり、
「太っているか」よりも「どの脂肪が多いか」が認知機能に関わる
ということ。


代表的な研究ではこんな結果が

  • 内臓脂肪が多くVSRが高い人ほど、認知テストの成績が低い
  • 脳の海馬や前頭葉が萎縮している例が多い
  • 内臓脂肪 → インスリン抵抗性 → 認知症リスク の流れが確認されている

特に女性や、BMIが高くない(見た目は普通体型)でも
内臓脂肪が多い人は要注意とされています。


🔍 総まとめ:

内臓脂肪は「つきやすいけど減らしやすい」

ここからが実践編です。


🥗 ① 食事 — 合言葉は「血糖値を急に上げない」

内臓脂肪が増える最大の原因は、
食後の血糖値の急上昇(→インスリン大量分泌)

✔ できることリスト

  • 主食を減らし、雑穀米・玄米・オートミールに置き換え
  • 魚・大豆・鶏むね肉でたんぱく質を確保
  • 青魚・オリーブ油など“抗炎症系の脂質”をとる
  • 食べる順番は 野菜 → たんぱく質 → 炭水化物
  • 清涼飲料水はできるだけ避ける

👉 糖質ゼロにする必要はありません。「急に上げない」が大切です。


🚶‍♂️ ② 運動 — 強度より“頻度”が効く

内臓脂肪は 有酸素運動で燃えやすい のが特徴。

✔ おすすめメニュー

  • 速歩き・軽いジョギング:20〜30分を週5回
  • スクワットなどの軽めの筋トレ:週2〜3回
  • 階段を使う・1駅歩くなどの“日常活動”を増やす

👉 長く座りっぱなしは内臓脂肪が増えやすいという研究も。
 1時間に1回立ち上がるだけでも違います。


😴 ③ 睡眠・ストレス — 「コルチゾール」を減らす

ストレスホルモンのコルチゾールは内臓脂肪を増やします。

✔ 今日からできること

  • 6.5〜7.5時間の睡眠
  • 寝る前は部屋を暗く、スマホは控えめに
  • 入浴・深呼吸・軽い運動などで気持ちを整える

④ 栄養・サプリでサポート(エビデンスあり)

  • EPA/DHA(魚油):内臓脂肪を減らす
  • ビタミンD:脂肪代謝&認知機能をサポート
  • 緑茶カテキン:内臓脂肪を燃やす
  • プロバイオティクス:腸内環境→脂肪蓄積を抑える

⑤ 定期チェックで「気づく」ことが大事

  • 男性:腹囲85cm以上
  • 女性:90cm以上

これは内臓脂肪が多いサイン。
体組成計やCTで確認すると、より正確に分かります。


🧭 まとめ:

VSRは“認知症予防”のヒントになる

  • 内臓脂肪が多いと炎症が増え、脳の働きに悪影響
  • 皮下脂肪が少なすぎても脳が弱りやすいことが示唆されている
  • 大事なのは「脂肪の量」より「脂肪のつき方」
  • 食事・運動・睡眠でVSRは十分改善できる

🔍 追伸:最新研究(2025年・滋賀医科大学ほか)

ご紹介いただいた
“脂肪の分布と認知機能の関係”を調べた論文 ですが、
ポイントは以下の通りでした。

  • 日本人男性のように「BMIが高くない集団」でも、内臓脂肪の割合が重要
  • 皮下脂肪が少なすぎると逆に脳を守る力が落ちる
  • 「VSRは低いほど良い」という単純な話ではなく、
     中くらい(1.0~1.3)が最も良い可能性
  • つまり、
    “内臓脂肪を減らす”+“皮下脂肪を極端に落としすぎない”バランスが大切

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